111号【特集】

 特集 

 商学交流事業
  和田町商店街協同組合を対象に大学の知恵・人材を商店街活性化へ
  横浜国大と保土ヶ谷区が共同研究


 横浜国立大学が、保土ヶ谷区(区)が今年度から始めた「商学交流事業」に参加、区内の和田町商店街協同組合の活性化研究に区と共同で取り組んでいる。横浜国大では、建築、都市計画、都市防災、環境工学など複数の専門領域の教授・講師、学生ら約30人でプロジェクトチームをつくり、和田町協組、区と協力して、商店街活性化の可能性を探っていく。
 「地域のまちづくり」は、大学など多くの教育・研究機関も重要なテーマとするようになった。商店会と
しても、それらの機関と交流を深めていくことが必要ではないか。

 1・商学交流事業の概要

■地域の知的資源としての大学に着目
 保土ヶ谷区が「商学交流事業」を始めたのは、商店街・地域の活性化に、横浜国立大学(以下、横浜国大と略)という区内の知的資源を活用するため。
 区では、このことを昨年9月横浜国大に申し入れ、それを受けた横浜国大では、学内の教授、講師ら(教官)にそのことを諮った結果、建築関係の複数の研究室から、「研究テーマに合致する」、「温めていた構想を実験してみたい」、「学生の教育にもなる」ということで数人の教官が名乗りをあげ、学内に「和田町いきいきプロジェクト」を結成した。
 このプロジェクトの特徴は、(1)特定の学科やゼミだけで実施するのではなく、複数の学科にまたがる大学院、学部の教官、学生らの希望者が参加する(2)学生を主体とし、教官はアドバイザーとなる、など。

■和田町商店街協組を選んだ理由
 対象商店会(1商店会)を選ぶに当たり、区では、保土ヶ谷区商連加盟の全商店会に連絡、応募のあった数商店会から和田町商店街協同組合を選んだ。
 理由は、(1)和田町協組は以前から区が開催する講習会などに積極的に参加していた(2)組合員数も賛助会員を含め100店以上と一定の規模がある(3)横浜国大から近く、多くの学生に馴染みがある、など。

 2・事業アイデアと組織

■事業は4WGを中心に推進  
 横浜国大の和田町いきいきプロジェクトでは、研究テーマ(事業計画)について、参加者からアイデアを募り、4ワーキンググループ(WG)を設置した。
 WGは、学生(大学院生)が幹事となり教官、和田町協組の理事らも参加している。
 各WGは毎月1〜2回の会合を開き、その状況は、毎月開催の「拡大総合協議会」で報告・検討される。この協議会には、各WGの中心メンバーのほか、区など関係機関の担当者や地域住民も参加する。
 この協議会に地域の消費生活推進委員、町内会役員、横浜市経済局、区商連らのメンバーが加わるのが、「検討委員会」。最初の基本方針、中間報告、年度末の報告などをチェックする。

bvGの検討項目(案)
(1)基礎調査分析WG
 このプロジェクトの活動による変化をとらえられるよう現状の把握と、その後の変化を把握する。
・プロジェクトの目標(活性化の中身)の明確化
・商業活動調査
・人の流れや活動の調査
・空き店舗調査

(2)イベント・ビジネスWG
・商業活動活性化対策
・新イベントの企画│青空市、リサイクル市、フリーマーケット、アートイベント、大学のサークルコンサート等
・地蔵祭り(和田町協組の恒例イベント)への参加
・視覚障害者自由散策の商店街
・地域学校の創出│大学の出張講義、防災などのNPOによる講義、多国籍会話教室

(3)空間デザインWG
・空き店舗活用│コミュニティーオフィスの事業化(イベント企画、HP作成事業等)、交流サロンとしての利用
・景観分析と計画─サイン、看板、照明、ファサード
・商店街と国大間のシャトルバスの可能性、歩行ルートの快適化

(4)IT戦略WG
・タウン情報マップの開設・運営、地理情報システム
・人、まちの情報バンク
・FMラジオ局の開設
 
■WGの枠超えた組織も
 地蔵祭り、HPの作成などは、WGの枠を超えたチームをつくり、実施にあたる。例えば、8月下旬に和田町商店街で開かれた地蔵祭りには、イベントビジネスだけでなく空間デザインなど他のWGからも有志が参加した。

■3年計画で
 以上の事業アイデアは、今後3年間で詰め、実施する予定。
 初年度は基礎調査を中心に、当面取り組めそうな、地蔵祭り(8月末に終了)・べっぴん市の強化や情報紙・HPの作成などに取り組む。
 2年度は短期事業の検討・実施、3年度は短期事業の実施・評価、長期事業の計画。
 9月5日現在、検討委員会1回(7月)、拡大総合協議会2回(8、9月各1回)、WGでは、数回に及ぶ会合を開いている。


 3・当事者の抱負

■現実的な提案を大学の知恵と行動力に期待 村上弘一理事長
 このプロジェクトは、区から案内があり、公募したら、指定された。和田町も非常に厳しい状態にある。地蔵まつりなどイベントでは人が集まるが、それがふだんの来街につながらない。
 今回のプロジェクトでは、学生さんたちが中心となり、大学の知恵が発揮されるので、我々商人と違った発想の提案が出てくると期待している。商人は、やらないうちから「こんなものはだめだよ」となりがちだが、大学の皆さんには、どんどんアイデアを出してほしい。ただ、1店で何十万円、何百万円も負担するような計画では難しい。計画のための計画ではなく、私たちがすぐに取り入れられるようなものを提案していただければありがたい。もちろん、私たちも大学や区にお任せでなく、一緒に議論し、行動していきたい。
 時間の感覚など学生さんたちと違うこともあり、とまどいもある。彼らにとっても同じでしょう。当面は、お互いのコミュニケーションを深めること。

■地域貢献の実証的研究の場に 学生の教育、研究者の課題検証
 
佐土原聡教授(大学院環境情報研究院・環境システム学専攻及び工学部建設学科建築学教室兼任)
 昨年11月にこの話があったが、「まちづくり」というテーマからか、経済や経営関係の先生からの反応はなかった。
 「商店街をどうするか」は、日本全国に共通するまちづくりのテーマ。都市計画の研究者にとっては中心市街地活性化、設計やデザイン研究者にはバリアフリーや景観、私のような環境情報研究者にはデジタル地図情報システムの構築と活用などで関係がある。それらの問題を商店街の皆さんと一緒に取り組んでいきたい。
 商店街は効率性では問題があるかもしれないが、車で遠くに出かけて買い物するというのは環境悪化につながる。中心部を充実させ、多様な生活ができるようにすべきではないか。そのあたりを詰めていきたい。
 また、住居の近くに、小さくても安く使える仕事場などがほしい、という人も多い。それで空き店舗を、そのようなスペースをいくつかまとめたコミュニティーオフィスにというテーマを持つ研究者もいる。
 学生たちにとっては、生きた勉強の場となり、教官たちには、個々にあたためていたテーマの検証・実験の機会となる。
 私たちとしては、商店街で問題になっていることを教えていただき、解決策を共に考え、実践していくことで、「大学として地域にこんなことができる」というものを生み出していきたい。

■地域情報を学生にも伝える仕組みを
 
吉成主税(大学院修士課程1年。イベントビジネスWGの幹事) 
 和田町商店街で8月下旬に行われた地蔵祭りでは、WGの枠を超えた学内チームを結成して、参画した。
 実施までに商店会の役員さんと10回近く打ち合わせをしたが、役員さんたちは毎日商売をしながらなので忙しく、最初は時間の感覚も合わなかった。また、和田町協組は、専従事務員さんもいないためか、事業の記録をとり、つみあげていくということがあまりないようだ。「だれが、こういうことをして、こうなった」という記録があれば担当の方が代わっても取り組みやすい。
 それと皆さん、個々にはいろいろアイデアがあるが、それが形になってこない。忙しすぎることや費用負担の問題などのためだろう。
 横浜国大生の多くは地方出身者で、アパート住まい。地域とのつながりは薄い。それでも、地域のお祭りなどの情報がわかれば参加してみたいということもある。そういう層へもっと情報を発信すれば、商店街もより身近に感じられるはず。そのあたりを取り組んでみたい。

和田町商店街の概要
 1953年(昭和28年)頃、和田町商栄会として発足。60年(昭和35年)頃、協同組合化。
 相鉄線和田町駅から国道16号沿いの一部までを範囲とし、加盟店は賛助会員約20店を含め101店。
 空き店舗は3店ほどと少ない。
 事業としては、夏の地蔵祭り、夏と年末の売り出し、毎月1〜5日のべっぴん市、ままスタンプなどがあるが、地蔵祭りを除き、低迷気味。
 賦課金は、月平均4000円程度。理事は16人(女性は2人)で、平均年齢は50代後半。

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