112号【特集】

 特集 
 商店会の駐車場経営を考える
 実施している会では大きな財源に
 神奈川区の大口通商店街協同組合が今年の6月13日から、商店街近くの空き地を借りて、27台収容の駐車場経営を始めた。開業3カ月で、返済を含めた維持費は収支トントン、半年で黒字になる見込みという。
 経済状況は極めて厳しいが、地価が下がり、空き地が増えているだけに、駐車場設置など商店街整備のチャンスといえるかもしれない。そこで、市内商店会の駐車場経営状況を調べてみた。
 市内事例◆神奈川区・大口通商店街協組
 地域振興にと県営住宅跡借り27台の駐車場始め、軌道に

県の土地を地域振興の一助に
と借りた大口商店街の駐車場

財政難の県を「地域振興のため」と説得
 大口通商店街協組が駐車場経営を始めたのは、店街中ほどから横道に入って100メートルほど先にある県営住宅の跡地640平米を同協組として借りることに成功したため。
 話は昨年9月にさかのぼる。それまで借りていた駐車場が貸し主の意向で契約解除となり、代わりを探していた鈴鹿市郎理事長が前記の物件に着目した。老朽化した2階建ての建物と草ぼうぼうの住宅跡地がこの状態のまま続くのは、景観や治安の上でも問題だし、大口地区を利用する消費者や多くの地域住民が必要としている駐車場に転用できないかと考えた。
 あちこちに問い合わせた結果、「所有・管理しているのは県。しかし、いずれは取り壊され、競売にかけられる」と聞き、「建物が取り壊されてからでは遅い」と急きょ、県の担当部署や神奈川区役所の地域振興課にかけあった。
 当初は、「県の財政は非常に厳しい状態にある。遊休地などは売却して財政に少しでも寄与したい」ということで断られた。
 しかし、周辺商店会や町内会役員らの合意を取り付け、「管理は商店会で責任を持つから、地域のために貸してほしい」と何度も話し合い、「そういうことなら」と了解をとりつけた。

好条件で賃貸契約、工事費は630万円
 条件はよかった。2年ごとに、商店会が「土地の賃貸契約を続ける」と事前に意思表示すれば自動更新となる。
 整地や無人システムの導入などで工事費は630万円かかった。県や市の補助制度の活用も考えたが1年以上先になるので、大口通協組として銀行から借り入れた。
 無人にしたのは、人の管理が難しいため。
 最初の20分は無料にしても半年で黒字の見通し。
 維持費は、返済金、機器のリース料や保険を含め1カ月48万円。
 見込める収入は駐車料だが、最初の20分未満を無料とした。幼稚園の送り迎えなど短時間の利用や簡単な買い物も無料で済む。買い物客へは、各店が110円で購入した30分無料カードを、各店の裁量で進呈する。
 現金利用は20分ごとに100円。夜間(20時〜翌朝8時)を1時間100円と安くしたことで地元の人に喜ばれているという。

 
周辺商店会にも便宜
 また、周辺の曙通商店会、大口通1番街振組、七島通商店会には30分無料カードを 10円安く、1枚100円で分けている。駐車場事業で多少でも各会の収入増になればということからだ。鈴鹿理事長は、「この分なら、近いうちにもっと安くお分けできるだろう」と期待する。
 実際、10月あたりから毎月の維持費48万円を上回る収入があり、駐車場の存在がもっと浸透すれば、更に利用が増えると見込まれるためだ。

管理運営委員会を設置 
 管理運営は、ベテランによる管理運営委員会を設置して対処している。
 また、地域住民にも親しまれるようにと、近くの公園や空き地の草刈り・清掃など環境整備を毎月実施している。環境整備については委員会のメンバーだけでは大変なので全員に呼びかけて実施している。そのための電動草刈り機も購入した。

その他の商店街の動き

◆リニューアル 港南区・芹が谷銀座商店会
 
月末に駐車場のリニューアルを終えた。リニューアルの中身は、老朽化し故障がちだった駐車場システムの一新と完全自動化、外装工事など。
 これまでも無人化システムだったが、何かトラブルがあると商店会の担当者が駐車場まで飛んでいたのを管理会社に委託して、担当者の負担を大幅に軽減するようにした。
 同会の特徴は、加盟店のサービス券購入負担を0にしていること。地代や管理費を払い、なおかつ加盟店のサービス券負担を0にしてもやっていけるのは、買い物客以外の現金利用客があるため。

◆収入減少で販促費値上げ 南区・横浜弘明寺商店街協組

商店街から100メートルほど脇に入った
ところにある弘明寺街の駐車場

 駐車場を設置したのは1975年頃。当時の青年部が土地を借りて、独立採算で始めたのが最初。その後、3カ所に増やし、売り上げは順調に伸びたが、部員の数が減り、独自運営が困難になったため同協組に移行した。
 6年前、同協組の年間駐車場収入は53台で約6000万円だった。利益も大きくポイントカード事業などへの大きな補填財源となっていた。それが昨年度は約3000万円に半減した。
 同協組の笹川邦義駐車場委員長は、以下3つの理由をあげる。
 1・長引く景気低迷と駐車場管理会社の増加などで土地を駐車場にする事業所・個人がこの数年急増したこと。それらの駐車場は料金も比較的安く、これまで組合の駐車場をよく利用していた顧客の一部が移った。また、組合駐車場のサービス券(30分券60 円)を大量に購入していたパチンコ屋さんが、安い駐車場に変えた。組合でも2年ほど前に料金を1時間460円から400円に下げたが、それでも周辺にはもっと安い駐車場が少なくない。
 2・1キロちょっと先に出来たイトーヨーカ堂(1000台分の無料駐車場がある)やひと駅隣の上大岡駅前の再開発の影響が徐々に出ている。
 3・1年余り続いたアーケード新築工事期間中に来街しなくなったお客が少なくない。
 駐車場収入の落ち込みは、それまで駐車場利益から多くを補填されていたイベントに響いてくる。このため、1年ほど前に毎月の販促費(一般賦課金と別)を1万円に引き上げ、予算捻出に努めているが、それでも以前ほどの予算は組めない。少ない予算でいかに効果的なイベントを組むか、役員さんたちは汗と知恵を絞っている。

◆有力利用店が独自に建設 緑区・中山商店街協組
 中山協組でも事情は似ている。
 同協組では、周辺に競合する駐車場が増えたほか、大口利用者だった組合員の、あるパチンコ店が独自に駐車場を設置したことも響き、この数年で売り上げは2割減少している。
 それでもJR中山駅前に 台、離れたブロックに134台(契約駐車場)、合わせて182台もの駐車場は、同協組には年間数千万円という大きな財源となっている。

◆SC進出に備え、券出し意識徹底へ 旭区・鶴ケ峰商店街協組

相鉄バスターミナル跡地を借りた
鶴ヶ峰商店街の駐車場

 相鉄バスターミナル跡地を借りて駐車場事業を始めて6年、良好すぎるほどの経営状況だが、3年後には相鉄線鶴ケ峰駅反対側にショッピングセンターが建設され、大規模の駐車場ができる予定がある。
 現在、駐車場収入に占めるサービス券売り上げの割合は非常に低く、加盟店が徹底して出していないため、SCに対抗するためにも券出しの徹底を図る。駐車場の管理人には券をもらわなかったという苦情があった場合は店名を聞くよう指示、組合からその店に伝えるようにしている(同組合・佐々木忠義理事)。

 県外事例◆広島市・中の棚振組
 
やる気の有志で開業、年商3億円に
 広島市中心部の一角にある、中の棚振組の役員有志3名は、共同で26億円を借り入れ、400坪強の空き地を購入、昨年2月、自走式の立体駐車場を完成させ、初年度から採算ペースに乗せている。
 当初は高度化資金を借り入れ、若干の補助金も得て、同振組で建設・直営するはずだった。事前に、この地域での駐車場ニーズ、主要駐車場の売り上げや利用状況などを調べ、収支計画を立てたら、「かなりの利益が出る」見込みが強いことがわかった。
 大半の組合員は賛同したが、一部の有力組合員が「万一失敗したら誰が責任をとるのか」と強硬に反対し、市や県にもその旨、働きかけたため、県の高度化資金担当者が難色を示した。この際、数人の組合員が脱会した。
 このため、賛成する組合員で別に協同組合をつくり、改めて高度化資金を借りることになったが、時間がかかり、土地の契約などの問題もある。
 そんな時、ある資産家の組合員が、「この計画で失敗するほうがおかしい。時間がかかるなら俺1人でやってもいい。運営は振組に委託して、利益の一部は振組に還元する」と提案してきた。
 結局、「1人に任せるのはまずい」と資力のある役員3人が共同で借り入れ、運営は振組事務局に委託することになった。
 そして292台収容の駐車場を昨年2月にオープン。5カ月目ぐらいから採算ペースに乗り、最近では、年間3億円ペース。返済や各種経費、減価償却、固定資産税等を引いても、6000万〜7000万円の利益が出る見通し。
 ビジネスにリスクはつきものだが、慎重な計算のうえでの決断がいかに大事かという事例といえる。投機ではなく、地域に眠るニーズを掘り起こし、事業化すべきことはまだまだあるのではないか。

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