116号【特集】

 特集  地域のニーズをビジネスに
  商店会はコミュニティービジネスの有望な担い手!

 最近、地域興しの一手段として、「コミュニティービジネス」が注目されている。地域の労働力や原材料、技術力などを活用して地域の需要を満たすビジネスのことで、地域課題の解決や地域経済の活性化に貢献するものとして期待されているからだ。このコミュニティービジネス、地域に根を張る商店会として積極的に研究すべきべき事業ではないだろうか?

 コミュニティービジネスとは

 コミュニティービジネスとは、ひとことで言えば、「無償のボランティアとしてではなく有償で、地域のニーズに応えるビジネス」といえるだろう。主体は、民間非営利活動団体(NPO)、企業組合、農業法人のほか、有限会社、株式会社など。任意団体や個人でも構わない。当然、商店会あるいは商店会の有志も主体になりうる。

◆期待できる効果
・個人の働きがいや生きがいなどの自己実現の追求
・行政では対応できない多様なサービス、企業では採算の合わない種類のサービスの提供を通しての、地域コミュニティーの再生
・女性や高齢者など、まだ十分に活躍の場が提供されていない層の社会参画の拡大や、就業・雇用の場の提供
・地域における新たな創業の機会を提供。また、創業・ベンチャービジネス展開のための苗床としての可能性
 ――などがあげられる。

◆事業内容
 福祉、まちづくり、環境、IT関連など多岐にわたる。
 地域で必要とされながら、行政も民間企業もあまり取り組んでいない分野が主なターゲットになる。行政が行う非営利の公の事業と、民間企業が行う営利の私的事業の中間的な事業といえる。個人の利益ではなく、地域のニーズに応えることを第一としながら、採算性も両立させることが大きな特徴といえる。
 具体的にはどのような事業か? 下表は、経済産業省などの資料を参考に本紙編集部でまとめたものだ。

 コミュニティービジネス一覧
 生活密着型ビジネス 介護・介助、ディケアサービス、家事サービス、子育て支援等
 地域振興 まちづくり(イベント企画運営や駐車場の運営、空き店舗経営・起業支援など)、文化の継承・創造、観光、国際交流など
 資源循環型社会の創出 環境・エネルギー・リサイクルの推進など
 地元企業や個人の事業支援 教育、経営の一部または全部の代行(経理、宣伝、販売促進、HP作成等)

◆成功のポイント
・人脈の徹底活用で、ニーズ発掘と運営体制
 地域には、様々な能力、人脈を持った人材がいる。しかも、定年退職や結婚、子育て中で、地域での仕事に興味・意欲を持つ人も少なくない。
 また、顧客の開拓も、行政、町内会など地域の人間関係を活用して、情報を収集することで、事業の開拓・受注につなげ、財政基盤と社会的信用、ノウハウの確立を図ることが可能だ。
 同様に、様々な能力・情報を持つ地域の人々を組織化することで、ニーズに対応する体制確立も可能となる。 

・地域の個人・組織との連携
 最近、託児所やパソコン教室をやってみたいという人や組織が全国的に増えている。このような人々との連携を深めることも大切だ。
 また、少子高齢化対策、IT普及のため、行政も支援制度を充実させている。

 事例

1・東京都足立区 株式会社アモールトーワ

空き店舗が増え、厳しい状況だが、弁当宅配や学校給食などで地域に貢献している東和銀座商店街

商店会有志で会社設立
病院の売店・食堂皮切りに業務広げ、年商4億円
 商店街でのコミュニティービジネス成功例として有名なのは、東京都足立区の東和銀座商店街振興組合有志約40名でつくった株式会社アモールトーワ。
 戦後まもなくでき、近隣住民を対象に栄えた商店街だったが、大型店が周囲に相次いで出店したことなどで、集客力は落ち、空き店舗も増えてきた。そこで振興策を模索していた90年、商店街近くに公立病院が開業することになり、売店と食堂の経営受託を振組で受けられるよう交渉、「商店会ではなく、会社なら検討する」ということで設立した会社だ。
 この受託経営は短期間で軌道に乗り、新たに空き店舗2店の経営(鮮魚・惣菜、パン)、学校給食(区内約10校)、老人向け弁当宅配、地方物産のアンテナショップ、ビル清掃などを手がけ、従業員は100人以上で、年商は約4億円。黒字だという。

地域の応援で黒字になった宅配弁当
 アモールトーワの特徴を表しているのが、高齢者向け弁当宅配。きっかけは区内の弁当宅配サービスを紹介した区の広報紙。東和銀座の地域だけ、弁当宅配を担う企業がなかった。東和銀座振組理事長でもある同社の社長、田中武夫氏は、会社として取り組むことを提案したが、「取り組む企業がないのは利益が見込めないから。設備に資金がかかるし、赤字がふくらむだけ」と反対された。
 田中氏は、「地域の人々が困っていることにできる限り応えるのが商店街の会社」と主張、「設備資金は自分が保証人となって銀行から借りるから」と説得して始めた。
 宅配は月曜から金曜の毎日。採算ラインは100食以上(1食600円)と言われたが、20食からのスタートだった。初年度売り上げは650万円で予想通り赤字だった。周囲からは、「やっぱり」という声が出てきたが、高齢者に地道に弁当を配達しているこの会社を、地域で盛り立てていこうという動きが口コミで広がり、自治体、地元企業、サークルなどから仕出し弁当の注文が増え、宅配弁当も100食近くになり、最近では黒字が続いているという。
 また、弁当の材料となる米やおかずなどの食材類は商店街の加盟店から仕入れ、多少なりとも、それらの店の売り上げ増につながっている。
 また、ビル清掃業務は、廃業ないし、時間のある経営者らの雇用受け皿になっている。

商店街は厳しいが会社は順調
 空き店舗は会社設立後も増え続け、商店街としては厳しい状況だが、会社のほうは順調のようだ。

2・その他の商店街の取り組み

 アモールトーワの例に見るように、地域での雇用対策、来街者増加策、そして地域への貢献ということで、コミュニティービジネスは商店会でこそ検討すべきテーマといえるのではないか。

スタンプ
 本号5ページで取り上げた静岡県御殿場市の(株)アクティブモコのスタンプ事業もコミュニティービジネスの一例といえるだろう。事務所開設などの立ち上げに800万円の融資を受けたが、情報機器などを増やし、パート職員3名を雇用しながら1年弱で完済している。

(株)アクティブモコは、スタンプ事業の収入を事務所の充実にも活用している

貸し店舗
 石川県金沢市の竪町振組では、商店街内のビルの権利を保有、企業や専門学校に貸しているほか、イベントスペースの貸与、大型ポスター制作機や印刷機など各種の事務機器を揃え、実費で提供しており、近い将来は組合員有志で運営会社を設立することも検討中。
 横浜市内でも、事例はある。
 保土ヶ谷区の西谷商栄会が2000年12月に立ち上げた「井戸ばた倶楽部@nishiya」も一例といえるだろう。50平米の空き店舗を借り、インターネットの無料体験コーナーや車椅子でも利用できるトイレ、そして住民希望者へのスペースレンタル。1坪ほどを5区画、50センチ立方のレンタル棚を53ブース、そして壁面を展示用に有料で貸しているが、利用状況は90%と好調。県と市から補助は受けたが、自己負担分も約200万円あり、商店会の共同施設積み立て費から借り、1年余りで完済した。

空き店舗もコミュニティービジネスのタネに(保土ヶ谷区・西谷商店街の「井戸ばた倶楽部@nishiya」HP)

駐車場
 緑区の中山商店街協組の有志31名で土地を保有し、同協組の駐車場用に貸し、商店街事業としても大きな成果をあげているのも一例だ。南区の弘明寺商店街協組、神奈川区の横浜橋通商店街協組など、駐車場を貴重な収入源とする商店会はいくつかある。

3・主婦や高齢者グループも

ホームページ制作
 東京都墨田区では、パソコン操作を勉強した主婦グループが、区内商店のホームページ制作を代行している。HP制作にあたって注文した店を取材することになり、それを契機にいろいろな店を知ってもらうことができるという副産物も生まれた。
 福岡県久留米市では、やはりパソコン操作を覚えた高齢者が地元店のホームページ作成を請け負っている。

特産品の生産と販売
 長野県小川村の「(株)小川の庄」。過疎の一見、何もない村だが、特産品のおやき(野沢菜をいれたまんじゅう)を地元農家の高齢者が集まって製造、都会に売り出している。これが当たって、今では従業員数80名以上、年商7億円規模に。オーストラリアに農場を作ってそばを栽培し、それを輸入してそばを作るなど、事業も拡大。60歳以上に限定した高齢者を従業員とするのも特徴。
 

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