120号【特集】

 特集  構造変化の時代に元気なまちの商業者たち

 現在の景況について、多くのベテラン商店主が「こんな長期で厳しい不況は経験がない」と言う。実際、多くの商店街では空き店舗が増え、停滞感が漂っている。そごうやマイカル、ダイエーなど経営破綻、または実質破綻した大手流通業も出ている。これは、世界的な競合激化、デフレ現象、消費行動の変化、多くの国民が先行き不安を消せないような政策など、一商店や商店街の力だけでは変えられない大きな構造転換の時代が始まっている結果でもある。
 それでも、消費者に喜ばれる商品を仕入れ、あるいは自らつくり、サービスすることなどに活き活きと取り組んでいる商店主や商店主婦らも少なくない。たとえ、大幅な売り上げ増や利益がないとしても、希望を持ち、楽しく商い・サービスをすることは可能だ。
 ここでは、自らの商売に懸命に取り組み、工夫を続けている商店の方々4名をご紹介しよう。

 51歳でパソコンを覚え、2年後にはHP作成

 磯子区丸山 レストラン・シン 中込千恵子さん 
 
パソコンで気分転換ができるようになったという中込さんと季節感たっぷりに演出された店内

 多くの商店主婦は「仕事があるから、家事があるから何もできない、どこへも行けない」と思いこみがち。
 磯子区丸山、レストラン・シンの中込千恵子(53歳)さんもそうだった。
 79年に夫の実さんとレストランを開業して以来、仕事や子育て、そしてお姑さんの介護と忙しい日々が続いてきたので、無理もない。
 だが、「趣味のちぎり絵やパソコンを始めてから、DMやPOP、ホームページなど、目に見える形で表現できる手段を見つけられたことで、満足できるようになった」と言う。

51歳から始めて、HPまで開設
 パソコンを習い始めたのは今から2年ちょっと前、51歳の頃からだ。
 先生は、以前から店のPOPなどをお願いしていた桜井幸子さん(彩工房というデザイン事務所主宰)。仕事が終わってから週1回、マンツーマンで教えてもらい、自分用の細部にわたるマニュアルを作って覚えていった。
 始めて1年くらいで、お誕生日カードなどDMに使う印刷物や店内の貼り紙などができるようになった。きつくて、さじを投げかけた時もあったが、次第に理解できるようになって面白くなった。
 「過疎地帯にあるお店がホームページを作っているのを見て、自分こそ(HPを)やらなくちゃと思った」千恵子さんは、桜井さんに相談。「自分でやれば費用はかからないし、好きな時に更新できる。絶対できるから頑張って」と言われて挑戦、昨年夏、見事、HPを開設した。
 開設してからは、HPのアドレスを入れた名刺を作っていろいろな人に配った。しかし、反応は殆どない。あきらめかけた。だが、「これからたくさんの方がパソコンを持つようになるので絶対に必要になる時がある、くじけちゃダメ」という桜井さんの言葉で思い直しているうちにEメールでの予約が来て、元気を取り戻したり。
 「まずパソコンを好きになり、楽しく遊べるようにならないと。そして教えてくれる人・相談できる人を身近に見つけることが、パソコンに挑戦する時のポイント」と言う。
 しばらく変えていなかったメニューを全面的に変更しようと、現在見直し中。
 そして、オリジナルメニューができたらHPで紹介していきたいと意欲を燃やしている。
◆店の概要
 創業 1979年 
 店舗面積 約20坪(客席10坪・24席、厨房10坪)
 体制 厨房は夫の実さん、フロアは千恵子さん担当、他にパート1〜2人
 営業時間 11時〜21時
 定休日 月曜
 電話 045-753-9702
 HP http://www17.u-page.so-net.ne.jp/pb4/chieko51/

 101年の伝統を情報発信と宅配で生かす

 都筑区中川商店連合会 吉野市作商店 吉野栄輔さん

 
 
吉野さんのうしろの棚には蔵元と共同開発した銘酒「都筑」やワインが、酒、込め、食品、雑貨、プロパンガスまで幅広く扱う吉野市作商店は、学校帰りの子ども達もコンビニ感覚で利用する


 現経営者の吉野栄輔さん(63歳)は3代目。創業は1902年(明治34年)、今年で101年の老舗だ。お祭りなどの時に餅をついて売ったのが商売のきっかけだという。

「都筑」の酒を蔵元と共同開発
 主力の酒、米は、多くのスーパーや安売り店が扱うようになって、以前に比べかなり厳しくなっており、毎年人口が1万人近く増えている都筑区でも廃業する店が出てきている。
 しかし吉野市作商店は、101年、この地域で営業を続けている盤石の信用で、公的機関への酒の納入や地域の行事などにも使ってもらえる強みがある。
 それも、山梨の蔵元と共同開発して、「都筑」の名をつけた酒やワインをオリジナル商品とするなどの努力の結果とも言える。「都筑」は、冠婚葬祭をはじめ、行事などで格好の話題を提供すると、喜ばれている。
 「ただ、今の若い人は日本酒を敬遠しがち。今のお得意が代替わりすると、配達がゼロになるのがこわい」との心配もある。しかし、ワインのほうは若い人が日常的に飲んでくれるようになって、好調だ。
 また、売れ筋商品しか置かないスーパーにはない、昔ながらのお菓子を並べているので、懐かしいと言って買ってくれる方も多い。

毎日情報発信
 区画整理に取り残され、安全快適に買い物できる道路状況ではないので、来店者を待つだけでは商売は難しい。
 そこで、毎日500枚のチラシを周辺の住宅にポスティング。原稿は吉野さんがパソコンでつくり、軽印刷機で印刷する。
 ポスティングは午前中、急ぎの注文の配達と一緒に回る。午後は通常の配達。月に2回ぐらい同じ家を回るというから、半月で7500世帯に情報発信していることになる。
 マンションのお客さんから、宅配してもらえるならとお米から生活用品までの注文があったり、要介護者を抱えている方やお子さんが小さい方、勤めている方などから宅配での注文が増えてきており、ゆっくりではあるが効果は確実に出始めている。
 現在、売り上げの7〜8割を配達が占めるという。

自店のHPも開設
 昨年7月からは自店のホームページも開設した。新住民は駅周辺の大型店は知っていても、従来からある店を知る機会はほとんどない。だから常に情報発信が必要。HPもその一環だ。
 「HP上からの注文はまだ2件。ほかに、HPで見たからとFAXの注文が時々ある程度ですが、平均年齢 歳と市内で最も若い都筑区ではインターネットの利用率も多いので、これからが楽しみ」と期待する。

◆店の概要
 
創業 1902年
 店舗面積 約40坪
 体制 配達担当は息子さんと男性従業員1人、店は吉野さんご夫婦と女性パート1人 
 営業時間 8時〜20時
 定休日 日曜
 電話 045-591-3026
 HP http://www.yosino-i.co.jp/

 旭区二俣川銀座商店街に昨年出店した、女性が元気なリサイクル店2店

 フリマ出店を経て開店  クラシックハート 佐藤利栄さん

 
 
佐藤さん(右)と頼りになる妹さん、きれいな状態にして品物を展示


 佐藤利栄さん(35歳)が店を構えたきっかけは、女の子3人の子供服の整理。「とにかくたまるのでフリーマーケットに出店して売ったりしていましたが、それでも追いつかないんです」。そこで、それなら自分で店を持とうと考えるようになった。
 また、佐藤さんの夫は古いおもちゃのコレクターで、今まで集めたおもちゃなどを売る店をと考えていたため、上下で借りられ、家賃も手頃だったため、ここ二俣川銀座商店街の店舗に決めた。
 1階は利栄さんのクラシックハート、2階は夫のクラシックトーイ。

持ち込み商品は買い取り
 クラシックハートでは、最初は当初の目的通り子供物だけを扱っていたが、お客さんの要望を受け入れていくうちに幅広く何でも扱うようになった。
 お客さんが持ち込んだ品物は、基本的に買い取り。「委託ならリスクはありませんが、品物が多いので、1カ月2カ月単位で常に管理するのは大変。いっそ買い取りにと決めました」。
 難しいのは、その場で買い取り価格を決めなければならないこと。即断できないものは預かり、ブランドものにも詳しい夫や時々店を手伝ってくれるイベントナレーターの妹さん(ファッション関係に詳しい)に相談する。
 服でもバッグでも今の流行、相場を知らなければ値段がつけられないので、リサイクル店だけでなく専門店もこまめに回って情報を仕入れている。

ネットワークの場、提供も
 今後は、リサイクル品だけでなく、手作り商品にも力を入れていきたいと言う。
 今でも、ビーズアクセサリーやカントリー調の木工、ブーケなど一定レベル以上の手作り品を置いているが、これらの作り手に発表の場を提供するだけでなく、教室開催などの機会もと考えている。
 「私自身、子どもが小さい時は何もできなくて、何かやりたいと思っていたから、この店は、売ったり買ったりだけでなく、もっと広いネットワークづくりの拠点になれるようなスペースづくりをしていきたい」。と、今からフリーマーケットなどで、センスが光る手作り品を扱っている人に声をかるなどして仲間づくりを始めている。

◆店の概要
 
開店 2002年4月
 店舗面積 約10坪(2階も同)
 体制 基本的に佐藤さん1人、時々妹さんが手伝う。
 営業時間 11時〜17時 
 定休日 日・水曜
 電話 045-392-0132

 自分の思うような店づくりをしたいと開店  アイズ 坂田純子さん

 
 
預かった品物は売り切るというポリシーの坂田さんとリサイクル品もおしゃれに展示された店内

 坂田純子さん(42歳)が店を開いたのは、3年間ほど勤めていたリサイクル関係の会社で、「私ならこんなふうにやる」といった、もどかしさがたまりにたまっていたことがきっかけ。
 そこで、自分の店を持つしかないと物件探しを始め、現在の場所に決めるまで50件ほど店舗を見て回った。
 ここを見た時は即決。駅から歩いて行ける商店街の中でと考えていたこと、1件おいて隣にリサイクルの「クラシックハート」があったのも決め手となった。
 「この商店街で店を出せたのはラッキーでしたね。防犯カメラも設置してあるので、お客さんだけでなく、女性1人の店でも安心して商売できます」。

生きる研修生時代の人脈
 専門誌でリサイクル店志望者向け教室を見つけ、第1号の研修生として2週間ほど通ってノウハウを学んだ。その主催者が開店時には品物を回してくれたり、メンタルケアもしてくれるなど全面的に協力してくれた。「リサイクル店というのは横のつながりがないんですよ、このネットワークがあるのは強みですね」。
 開店に当たって、店舗には殆どお金をかけず、自分でできることはすべて自分でやった。4カ月たった現在でも、まだ正式な看板はなく、入り口のガラス戸に「リサイクル・アイズ」と書いたポスターを貼っているのみだ。
 だが、ディスプレイをするのが好きだという坂田さんがしつらえる店内は、リサイクル店というよりおしゃれな生活雑貨の店という雰囲気で、雑貨好きの主婦層に人気はジワジワ広まっているようだ。

35歳超の女性に照準
 商品を揃えるに当たって、自分が好きな生活雑貨を中心にした。そして、「子供から手が離れてお金も多少自由になる35歳以上の女性にターゲットを絞りました。子供・男物・若者向け商品は一切扱いません」ときっぱり。 また、一定のレベル以上の品物以外は預からない、という姿勢をはっきり打ち出している。
 商品は全て委託で、手数料は30〜40%。預かり期間は30〜40日だが、預かったものは売り切るというポリシーで商売をしている。お客さんの了承を得た上で、3週間たって売れない場合は段階的に値引きするなどして、売り切る努力をしている。
 今の課題は、売れる品物を出してくれる人を見つけること。常に新しい人を開拓していかなければと、現在、全国の人を対象にできるように、宣伝方法や宅配システムなどを考慮中だ。

◆店の概要
 
開店 2002年10月
 店舗面積 約9坪
 体制 坂田さん1人。
 営業時間 11時〜18時 
 定休日 日・水・祝日
 電話 045-360-6030

 

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